一般的には紙の本の方が良いと思われているようだが、実は電子端末で読むことの方が情報処理の観点においては優れていることが実証された。驚くべきことに、高齢者にとって紙の本よりもiPadで読む方が3倍速く読むことができることも明らかとなった。
この発表はドイツのヨハネス・グーテンベルク大学マインツのStephan Fussel博士を中心とした研究チームによるものである。
一般的に、ドイツの読者は電子端末で本を読むことについてあまり好意的な印象を持っていないようなので、その理由を検証するために実験を行ったという。若者と高齢者の2つのグループに分かれた被験者を対象に、タブレットのiPad、EインクリーダーのKindle3、紙の本、の3種類の媒体で様々な種類や難易度のテキストを読んでもらった。そして彼らの視線の動きや脳活動の様子を測定し、テキストの理解度や情報の記憶度等を多角的に検証した。
ほぼ全ての被験者が紙の本で読むことを最も好んだにも関わらず、実験によって得られたデータは全く異なるものだったと、研究チームのメンバーであるMatthias Schlesewsky博士は述べている。実際にはタブレットの方がEインクリーダーや紙よりも情報をより簡単に処理できていたのだが、それをほとんど誰も自覚できていないことが判明したという。
実験データによると、若者の読書スピードはどの端末でもほとんど変わらず、高齢者に限ってはiPadを使ったときに他と比べて3倍も速く読むことができていた。また、Eインクリーダーと紙の本では、ほぼ読書のパフォーマンスは変わらないという結果が示されたにも関わらず、被験者の大多数が紙の本の方が快適だと答えたという。
「これらのことから、紙の本に対する主観的な好みは、情報の処理がいかに速くて優れているかを示すものではないということをわれわれは証明した。」と、博士は結論付けている。
確かにiPadであれば、文字を大きくしたり、背景の色を変えて読みやすくしたり、いろいろと自分好みに設定できるため、特に高齢者にとっては便利かもしれない。予約状況が好調で、数百万台の増産を行っているアマゾンのKindle Fireも、もうすぐ発売されることだし、タブレットで読書をする機会は今後どんどん増えてくることだろう。長年読み慣れた紙の本には愛着があるし、そう簡単には離れられないかもしれないが、読書の未来はタブレットへと向かっている。
[Johannes Gutenberg University Mainz(大学プレスリリース)]
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